 
私は大阪歯科大学を卒業(昭和33年3月)後、同校の「義歯を担当する教室」に入室し、義歯の専門医を目指す傍ら「診療」と「歯学生の教育」に従事して参りました。卒後10年程経過した時点で、これまで診てきた患者さんの経過(予後)観察をしました。大学で教わった通りの治療をしたにもかかわらず短期間で再治療(修理・修繕)や抜歯を余儀無くされるという結果でした。そこで何が原因なのかを模索することにしました。その結果、ムシ歯や歯周病(歯槽のう漏)になってしまってから治療するよりも、ムシ歯や歯周病(歯槽のう漏)に罹らないようにする「予防」が大切なことと、治療した歯を長もちさせるには、できるだけ「健康な歯を削らないで治療する」ことが重要であるとの結論に至りました。以後、臨床研究として「歯をあまり削らない治療法の開発」と「ムシ歯と歯周病の予防法」の2つに焦点を合わすことにしました。
その頃、岡山大学に歯学部ができ、昭和56年4月に岡山大学歯学部歯科補綴(ホテツ)学第1講座(義歯に関する講座)の初代主任教授として赴任しました。
岡山大学では、「歯をあまり削らない治療法の開発」のために必要な「歯に接着する接着材」を開発するために株式会社クラレと共同研究しました。その結果、昭和58年には世界に先駆けてコンポジット系歯科接着材「パナビア」が誕生しました。そこで「パナビア」を使って「歯をあまり削らないで歯の無いところにブリッジを架ける新技法『接着ブリッジ』」を考案し、旧厚生省から「高度先進医療」の認可を受けました(昭和62年)。
一方、歯の病気のムシ歯、歯槽のう漏に続いて第3の歯科の病気と云われる「口を開けると顎の関節が痛い」、「口を開けるとあご(顎)関節がポキッと音がする」、「口が大きく開けられない」などの病気すなわち「顎関節症」が注目されました。歯の噛み合わせは、顎の関節の病気にも関連すると云う立場から顎の関節の症状に合った治療法を考案し、昭和62年には「高度先進医療」として旧厚生省に認可されました。
また、ムシ歯予防に関係する「唾液検査」に関する研究も続けてきました。
特に最近では歯周病(歯槽のう漏)が薬で治る驚異的な治療法をはじめました。
この間の35年間、東京医科歯科大学歯科同窓会、歯科医師会、研修グループなどで歯科医師の先生方を対象にした研修会の講師として活躍させていただきました。
平成10年3月に岡山大学を定年退官することになり、退官後は私が卒業以来診療させて頂いた大阪を初め御遠方の患者さんや岡山の患者さん達のフォローのために自宅でささやかな診療所を開設し現在に至っています。
診療所では、私の専門の義歯(総入れ歯、部分入れ歯、接着ブリッジ)、顎関節の病気(顎関節症)、噛み合せ(咬合)の治療は勿論のこと、最新のインプラント義歯、ムシ歯予防のための「唾液検査」、ムシ歯菌の除菌治療(除菌法[Dental
Drug Delivery System:3DS])や歯周病(歯槽のう漏)の原因菌を取り除く新しい「内科的歯周治療」等『患者さんの利益を最優先した患者さんのための診療』を行っています。 |